脱毛サロンPRで炎上 てんちむの法的責任は?
【弁護士が解説】
インスタグラムで宣伝した脱毛サロンに、景品表示法違反の疑いが持ち上がって炎上状態となっている「てんちむ」(登録者数163万人)。
てんちむはこの件に関して「クリニックの弁護士さん曰く、違法ではないということを代理店さん経由で聞いています」と釈明しているのですが、実際はどのような法的判断になるのでしょうか。
(関連記事「てんちむ宣伝の脱毛サロンに景品表示法違反の疑い コレコレ生配信で釈明も批判殺到」)
この件について「SNS弁護士キタガワ」こと、弁護士の北川貴啓氏に取材しました。
「9ヶ月0円」表記に違法性は?
―今回の件で脱毛サロン運営会社は、広告の中で「9ヶ月0円」という表示をし、あたかも9カ月間無料のような表現をしていたのですが、実際は9カ月分の費用が後払いになるだけにすぎないだけのようです。
この広告手法は、法律違反にならないのでしょうか。
いくつかあるパターンの中で「有利誤認表示」というものがあり、自社の商品やサービスが、実際のモノよりもお買い得であると誤解させたり、他社のモノよりもお買い得であると誤解させたりする表現を禁止しています。
(参考:消費者庁「有利誤認とは」)
たとえ、注意書きが記載されていたとしても、気が付きにくい場所に小さい文字で記載されているだけのような場合などは、消費者の誤解を完全に払拭することは困難なので、許されないということになります。
有利誤認表示にあたる可能性が濃厚
―今回の脱毛サロン運営会社の広告表示は、有利誤認表示にあたるのでしょうか。
理由としては、「9ヶ月0円」の近くに「お得」という文字も記載されていることです。
「0円」」「お得」という記載を全体的に見れば、消費者は「後払いになるんだな」という認識ではなく「金額的に通常よりもお買い得なんだな」と誤解をしてしまう可能性がきわめて高いと思います。
ですので、もし単に「9ヶ月0円」という表現だけなら微妙かなとは思いますが、「お得」という表現も加わっていることも総合的に考慮すると、これは有利誤認表示に該当すると思います。
てんちむには法的責任なし
―現在この広告は「2ヶ月0円」という表示に変更されており、たしかに「お得」という文字は無くなっていますね。
では、今回の件でてんちむさんには何か責任が発生するのでしょうか。
たしかに、てんちむさんは自身のインスタグラムのストーリーズに「9ヶ月間0円で初期費用の不安もないし、満足するまでずっと通えるみたいです」と宣伝していたようですが、てんちむさんは脱毛サロンの広告を見て同じ内容の表現を使ってしまっただけにすぎないと思いますし、PR案件サービスの細かい内容や条件まで把握しなければならないという負担をてんちむさんに課すというのは、少し酷な気がしますね。
法的責任ではなく信用の問題
―そうなんですね、てんちむさんは以前にもPR案件や自身のプロデュース案件で炎上しています。
その度に謝罪し反省を述べていたのですが、このような問題が繰り返されていても責任が発生しないのでしょうか。
どういう理由であれ、繰り返し炎上してしまうインフルエンサーであれば、企業としては今後PR案件を依頼しづらくなると思いますので、あとはてんちむさんのほうでPR案件を受ける際にキチンとリーガルチェックなどをして、細心の注意を払っていくことが大切なのかなと思います。
弁護士 北川貴啓
慶應義塾大学法学部卒、明治大学法科大学院卒、神奈川県弁護士会(川崎支部)所属
■メディア実績
日本テレビ「実は私こういう者でして…」、フジテレビ「バイキング」、テレビ朝日「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」、TBS「ゴゴスマ」ほか多数